扉のそとの明るい闇に
もっぷ

扉のそとの明るい闇に
つっかけ一つで飛び出すと

石焼きいも屋さんがいた
おいちゃん、わたし千円持ってる
三つあげよう 特に美味しいのを選ぶからね
家には人間は一人しか待っていなかったけれど

粋じゃないから言わないどいて
袋を抱えて猫にもただいま

ありがとう お疲れさま
……これはほんとに美味しいよ
先に味見のかたちのお父さんから 三つのうち
これ
というのを受け取ってわたしもひとくち
うわあ この冬一番だ!
うんうんお父さんもそう思う

いま
扉のそとの明るい闇に
つっかけ一つで飛び出せば
空にはあの日とおんなじ月が
おんなじじゃないわたしをみてる
真冬に素足のつっかけは
うつつをおぼえてきついかな
今日のおまえはこの世で一人と
北西風にものこされて

ふと 石焼きいも と吹き込んである音源が
絶対に知ってるはずもないだれかの
たぶんちいさなトラックから
馴染みのような懐かしさを伝えてやまず
でもどこからなのかな わかりたくないな



自由詩 扉のそとの明るい闇に Copyright もっぷ 2017-01-02 23:38:12
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