情けない舟
千波 一也



いくつになっても
おとぎ話から離れられなくて
きっと
そこに善し悪しは無いのだろうけれど
少しばかり塩辛くて
気づけば周りは海だった
かつて
思い思いの夢たちを見送って
この身も
まぎれなく
そこに含まれるだろうことを
わかっていたはずなのに
もう
だれにも頼れない
まして
いまさら弱れない
けれども
どこへも往きたくない
喜び勇んで
流れてきたのに
迎え願って
流れていたのに
わからないものだね
簡単に呼べたつもりの
すべてのことは
あまりにも
重かった
かろうじて沈まずに
その
軽さに今
全身で揺れている







自由詩 情けない舟 Copyright 千波 一也 2016-12-27 23:47:47
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