散る
田中修子

お母さんがわたしを
おなかに宿したとき

ピンクや赤や白の花が
見渡す限り一面に
あまぁくあまぁくかおって揺れる
夢をいく晩もくりかえしたよ

だから
しらべなくとも
わたしが女の子だと分かったそうです

いま、わたしの垂らす蜜は
赤い鉄のようなかおりがするそうよ

淡い花のようで這い虫なんか
気付かぬうちにむしゃむしゃ喰ろうて
ドロドロの養分にしてしまう

這い虫溶かすなんて
詰らなくって

わたしの花海原を駆け抜ける
しなやかな獣の足もとに
パッと散らばり
笑いながら飾りたい

獣に踏みしだかれたわたしはきっと
とろんとして

散る 散る そう 散る


自由詩 散る Copyright 田中修子 2016-12-24 00:12:17
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