風雨の夜
田中修子

真ッ赤に燃えさかっちまえ
そうして真ッ白に舞い上がれ

灰に膿む空をにらみつけるわたしの目は沁みて

あの横須賀の廃屋のねむりよ
水色の目の車よ、またぐらでやわらかくあたたかく
あたため続けた猫よ

おりしも北では大火あり
東では鎮魂するようになまぬるい雨がふり
風がゴウゴウと鳴る

あの廃屋であなたと
腹を抱えて笑い転げ
こんこんと眠り続け
絶叫して目覚めて
体液を流し続けるわたしを
あなたはよし、よし、とさすりつづけ
猫は凛と現実に導いて時は流れた

横須賀の駐車場が見る廃屋の夢
白く笑うあなたまで飲み込んでまどろめばいい

「おねがいだから ひとりに しないでくれよぅ」

かつてあんなにもたくましかった
わたしに命を吹き込んだ、あなたが
涙をボロボロこぼしながら

「おとうちゃんと おかあちゃんに あいたい」

そうして

「めんどうをみたぶん かねを くれ」



さようならさようなら

あなたの思い出の骨の灰を養分にして

青い鬼火は獣の子を血みどろに孕む
強すぎる風雨の夜に


自由詩 風雨の夜 Copyright 田中修子 2016-12-23 00:44:05
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