言葉がなくなった日
水宮うみ

ある朝、おはようがなくなった。
朝食を家族と食べたとき、沈黙が怖いのでテレビを流したら、
言葉のない音を流し続けていた。居間にも世間にも喧嘩のない朝だった。
言葉がないので、穏やかだ。誰もが考えることができない。
僕は言葉のない鼻歌を歌った。言葉のない詩を書いた。
言葉がないから人と意思疎通することは難しくなったけど、
なんだかみんな同じように幸せそうで、幸せって言葉を使わなくっても幸せだってお互いに伝わった。

歌手たちの、名前も歌詞も無くなって、みんな音だけで幸せ、不幸せを伝え合う。

一日ぐらいそんな日があったって良い。
言葉が一度全部なくなったら、新しい言葉をきっと拾える。



自由詩 言葉がなくなった日 Copyright 水宮うみ 2016-12-15 22:04:40
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