空の道
藤鈴呼


アスファルトは灰色だと
思い込んでいたから

思わず目を疑った 
冬の道

煌めくならば 
銀色だったり するのだろう

今朝のように 真白の雪に 
覆われていたり

今 タイヤが 踏み締めている 
道はどうだ

まるで 空を 
漂っているかの ようだ

正面に見据える 太陽光が 
眩い 時間帯

溶けた雪が 水溜まりになって 
空を 映す

対向車との間に 浮かぶ雲 
いや 残る雪も

この 不思議な感覚を 
増長させる

わたし いま 
そらを あるいて いるの

ねえ くもさん 
あなたは どこへ いくの

完全な 映し鏡とは 行かぬ具合が
妙に 心地良い

湖面に映る 空のような 雰囲気ならば
何度か 体験しているけれど

明らかな 路面であるのに
逃げ水を 眺めるくらいの距離まで

全てが 鈍色の空

嗚呼 翡翠が 落ちている と 思ったら
映り込んだ 青信号

零れたヒスイを ゆっくりと 踏み締めて
前に 進む

幸せの意志を 包み込むような
柔らかさを 得る

美しい ルビーの趣を 連想する
今度は 赤信号

ルビーは 追い越せない
必ず 一度は 止まるんだもの

この上を 素通りすることは 
許されないの

新たに 出現する 翡翠を
もう一度 越える

太陽を 背にしてみれば
もう 茶色の道

カラカラに 乾いた アスファルトは
何の 変哲も ない

嗚呼 いつも通りだね
一瞬だけの しあわせ体験

ハンドル 握りながら
シャッター 切れなかったから

代わりに 言の葉で 記憶を 閉じ込めた
冬の 軌跡に ありがとう

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自由詩 空の道 Copyright 藤鈴呼 2016-12-04 09:18:08
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