お天道様ノ声―天守閣跡地にて―   
服部 剛

紅葉の葉群は節々に
うたを織り成し、風にさやぐ
皇居の午後

天守閣跡地のほとり
古い木目のベンチに腰を下ろす

巨きな四角い石垣の隅に立つ、優しい松の
頭上に広がる水彩画の空から
照らす――ひかりに目を瞑る

背後の木々の緑から
小鳥等の詩声うたごえは響き
両手を器にした、僕の
体の隅々にまで
ひかりは沁み渡ってゆく

振り返れば、人並に苦労して
時にとぼとぼ…しょっぱい涙を零しつつ
ここまで歩いてきたが
この世に…まだまだ悲嘆は隠れているが

今日僕は、初めて
日の本の国の道を味わい
ゆっくり歩み
自らを徐々に回復しながら
――ひとつの予感が芽生えたのです

あの天守台跡の上に広がる
初冬の空から世を照らす
お天道様は
無音ノ声で、一人ひとりの国民に
今日も囁きかけている

言葉にならぬ、地上の生の歓びを  






自由詩 お天道様ノ声―天守閣跡地にて―    Copyright 服部 剛 2016-12-01 21:43:56縦
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