渇望
小川麻由美

黄金比のような あの男性は
昨日も 今日も 明日も 明後日も
腕から 手から スティックから
小刻みな速さでもって
残像のようにシンバルを震えさせ
あの空間にある空気達を震えさせ
震えを受けた私の瞳を潤ませ
喜びさえも伴いつつ
現在も罪を作り続ける

罪は留まる事を知らない
美は罪である なんて言葉
今更ながら 認識させられるなんて
困惑した私だけど 否定なんてできない
もう美しくなんてない私だけれども
美を渇望する事は留まることを知らない

月が恥じて隠れるような あの男性は
昨日も 今日も 明日も 明後日も
美と呼ばれる罪を作り続ける
深まる美 深まる罪
そんな事などお構いなしに震えさせる
それこそが真骨頂である事を
私は認識しているのであるが
凝りもせずに 日々 美を渇望する


自由詩 渇望 Copyright 小川麻由美 2016-12-01 17:24:49
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