踏切
松岡宮

あれは なにに 向かっているのかしら
始発から終点までわずか7駅の
東急多摩川線の下丸子駅で
踏切を横切る黒いスーツの魚の群れ
陽射しの平手打ちを浴びながら
われさきに登れ登れと水を切り 
ドルフィン・キックの波紋はきらめき
ささやかな下丸子商店街に
ひとすじの黒い道ができる
あれは なにに 向かっているのかしら
発車時刻をもはや30秒過ぎ
くわん くわん くわん
おれは虫も殺したことがないからな
警笛ひとつ鳴らせない運転士の腕に
夏のしずくがひとすじつたう


自由詩 踏切 Copyright 松岡宮 2016-11-28 09:18:57
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