泥仕合
藤鈴呼


カラカラの うずまき
音が出る直前に
ジュワッと上がる 湯気ばかりを
連想する

カピカピの クチビルが
パキパキと
今にも ヒビワレテ しまいそうだけれども

ぬめっとした 舌で
軽く 拭う

そうすると 泥のように眠った
昼間の悪夢をも
払拭してくれそうな

鈍色の雑巾を 絞る瞬間を
思い出せる

そのまま もう少しだけ 歩を進める
風は 吹かないから

少なくとも 部屋の中では
吹き溜まりの 空気感だけが
ゆっくりと 存在していて

揺蕩う流れなど
まるで なかったかのように
小さな角度で 頬をくすぐる

茶色の 輪っか
犬の 首輪のような 大きさのそれを
胸に 抱きしめる

粉雪だから 平気

大きな傘も差さずに
誰に 襲われても 太刀打ち出来る様に

床と並行に 持つ

ぎゅっと握りしめた掌から
ゆっくりと 滲み出すのは

いつか ワタクシの肌を温めていた
赤色の 液体

それは ワインでもなく
血液と呼ばれる 個体でもない

ささくれだった指先やら
かじかんだ指の横側なんかに
惑わされぬように

指先で 三角を作り上げ
その スペースから 見上げた空が
目に 痛かった

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自由詩 泥仕合 Copyright 藤鈴呼 2016-11-26 14:36:06
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