ふたつ 冬野
木立 悟






光を打つものの影が
空に映り揺らめいている
二本の穂の墓
影が影に寄り添ううた


切り落とされても切り落とされても
見えない部位は羽ばたきつづけ
音の無い風が生まれ
海へ下る


暗がりに硝子が立ち並び
亀裂だけをかがやかせている
わずかに異なるかたちの木霊を
標のように重ねながら


すぎる人
くちびるの傷
衣の裏地に満ちる言葉
金の波の見える窓


火の粉が宙に灯を描き
永い永い径を描く
半分の顔が目覚めずに
雨の符と陽を浴びている


荒れ野に立つ双つの影から
空へのばされてゆく腕が
こぼれ落ちそうな滴のなかで
かがやく穂となりたなびいている


























自由詩 ふたつ 冬野 Copyright 木立 悟 2016-11-14 23:18:06
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