通り過ぎてった笑み
ときたまこ

ずっと前から探してくれたり、
ようやく会いに来てくれるのに

赤い目と、くちびる。
動かない目と喉。

たぶん全部この時のためにあったんだよって、
言いたい相手がいた。春が終わる前までは。

ねえ、これからどんどん寒くなっていくよ。
濡れた体をそのままにして熱を出してしまったよ
よくわからない薬をたくさん飲んで
どれかしらが効けばいいと思って寝る。

あたしはとても惨めだ。
何度もなんども繰り返して諦めて
いい加減に冬に目覚めないといけない。

この目が、見たものがすべて。

あなたの、汚い感情なんかに
傷つけられてる場合じゃないの。

わたしが好きな昼前の風景
揺れる洗濯物と風の音。
あれからずいぶん変わっていった
遠い車の音を
いつかの、きみと重ねて眠る。


自由詩 通り過ぎてった笑み Copyright ときたまこ 2016-11-04 22:15:48
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