局地からの模索を
天野茂典



  手が震える
  キーボードを打つのにも不便している
  手が震えない薬ももらっているのだが
  なかなかやまない 鉛筆やボールペンで
  字を書くときなどは苦痛である
  意識すればするほどいけない
  悪筆になる
  詩を書くときも
  キーボードががちがちする
  的確に文字が挿入できない
  でも何とかやっている
  詩が好きだからだ
  詩を書くのは苦痛だったが
  このごろそれほどでもなくなった
  いい詩が書ければいいが
  そんなのは稀で
  反古にしたいようなものがほとんどだ
  この詩もそんな一篇かもしれないが
  書いているときは何も思わない
  よかれと思うだけだ
  手が震えだしたのはいつからだろうか
  4年前頃からひどくなったのは覚えている
  牛乳を飲むにも
  手が震える
  鋏を使うにも
  手が震える
  そういえばバイクに乗るときは手は震えない
  手は進化の過程での
  MVPだ
  手が動物の中の技術者としてダントツに
  発達している
  その手が使い物にならなくなったらどうしよう
  薬害かもしれない
  先生にはいってあるのだが
  明日診察日だ
  聞いてみよう


  手よ
  局地からの模索を
  普遍への対峙を*



           *現代詩手帖 現代詩年鑑2005鼎談タイトル


未詩・独白 局地からの模索を Copyright 天野茂典 2005-03-02 16:05:15
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