祖母は千歳飴をなめる
白島真

 
                                                                            
大切な人が死んだとき
勿論、ぼくは生きていたが
最近、思うようになってきた
ぼくは死んでいたのではなかったかと


死んでいて
亡くなった父や母が悲しそうに
ぼくを見ている
そんな時間があるのではないかと


このままぼくだけが歳をとれば
父や母が
ぼくの子供になってもおかしくない
いや、彼らはぼくの子だったのだ


ブリキのおもちゃで遊ぶ父や
うさぎのぬいぐるみを抱きしめる母
祖父も祖母も着飾って
おいしそうに千歳飴を舐めている
ぼくがみんな買ってあげたのだ


曾祖父や曾祖母にも兄弟がいたはずだが
はっきりと思い出せない
それは記憶や知識が曖昧なせいではなく
まだその時がきていないためだ
明日、数年後、数十年後になったら
きっと思い出す あるいは
その事実に遭遇する


系譜はさかのぼるものでなく
いまここで織りなされているものだから
ぼくは毎日みずをあげ
こんにちはと声をかける










自由詩 祖母は千歳飴をなめる Copyright 白島真 2016-10-17 07:16:03
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