冬空君臨
藤鈴呼



震える身体を温めたいと 寄り添った枝が
乾いた空気を纏ったまま パチリと音を鳴らす

窓を叩く 霰との 二重奏
本当は 枝切り鋏も 加わったから 
三重奏なのだけれども

認めたくないのと 赤く流れる液体を 
白い布で拭きとる仕草が哀しくて 
瞳を逸らす

逸らされたままの 木の実が 
コロンと 所在なさげに 微笑んで 

その 寂しそうな 揺れ具合に 
ぽろんと流れた 涙 一つ

この 雪の奥に 閉じ込めたまま 
新しい ハミングを 重ねた

御寂しお見舞い申し上げます
そんな言葉が 存在するものと 
熨斗を眺めながら 呟けば
否 と 空から 
天使が舞い降りたふう

ゆっくりと ささやかな 音を借りて 
ここが 楽園なのだと 言わんばかりに 
かさこそと 肌を くすぐるから 
ふわりと 口角が 上がるのです

上を向いた 蕾が 
未だ未だ 咲く気配なぞ 見せぬのに 
何処かしら 安心できるのは

必ずや 咲く筈だと 断言できる程の 力強さに
囲まれているからなのです

切っ先鋭い刃を以てしても 
二度と 途切れぬ 関係のように

出来るならば 流すのは 赤い液体のみならず 
同じ色ならば 糸で包まれて 生きたいのです

揺れる雲の角度が 
どんな風に 描かれたとしても 

この 桜の悪戯を
笑って 受け留められるようにと
ゆっくりと 眺める

冬空を包む 枯れ枝の隙間に
次の春を 探すみたいに

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自由詩 冬空君臨 Copyright 藤鈴呼 2016-10-12 09:00:53
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