志田陸


言葉をのせた彼女の声とか
言葉にならない彼の声とか
全部まだ誰かの耳をすり抜けて
誰かの真ん中まで届く予定のある
そこは人間の、あたたかい、血なまぐさい

飛び交う声はほぼそこへおさまってく
でもたまに
もう二度と声になれない音が
ぽとぽと落ちて、滲んで、なくなる
餓死しに来た男が一人
ふとそれに気づいて泣いている

あたたかい、血なまぐさい
吐き気の止まない場所
でもやっぱり帰ろう、そこへ


自由詩Copyright 志田陸 2016-09-01 14:39:23
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