vision.10
ひだかたけし

夕暮れとも夜明け前ともつかない薄暗さのなか
元実家近くの空き地の脇を通り過ぎようとした時
焦げ茶色の雲が空き地のすぐ上に浮かび揺れていた

静まり返った薄暗闇に浮かぶその雲は
眼を凝らしてよく見ると
無数の糸状のモノが絡まり錯綜して形を成し
それらがそれぞれの響きを発し
その響きには独自の音階があった

空き地の薄暗闇に浮かぶ雲
 焦げ茶色にくすみ
薄暗闇の沈黙に浮かぶ雲
 無数の糸状のモノの絡まり
沈黙の静けさに浮かぶ雲
 響き無数の音階を伴い
静けさの時流に浮かぶ雲
 細かく振動し震え

夢のなか
覚醒した意識の視界に浮かぶ雲
入り乱れていた響きの音階は次第に

   ドソ ドソ ドソ
    ぉお ぉお ぉお
     ドソ ドソ ドソ
   ぉお ぉお ぉお

界から界へと呼び掛ける音楽音声とナリ 律動し始める








自由詩 vision.10 Copyright ひだかたけし 2016-08-27 11:55:53
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