金魚
百均


真っ白い炎が
咲き乱れて
花ちるさと
凍えるような涙で
殺菌する、
浴衣の模様を
黒地の頬を落ちる涙、
昔、
夏祭りに出かけて
一緒に金魚を網ですくった思い出がある
うちのお父さんが出資して打ち上げた
一本の花火を並んで
一つの机に腰掛けて

学校の校舎から
窓から見える花火が田んぼにキラキラと反射して見えた
亜久津君は次の日に転校してこの街から出て行った
同じ学年の子供たちが次々に疎開するように
四人程いなくなった夏の思い出

苦い夏の思い出だった
氷を口の中で転がして
氷結を飲む
今、俺たちは大人だ
なんとなく見知った女の子と手をつないで
夏祭りの夜を過ごしている
あ、金魚だ、となんとなく隣にいた女の子の面影を見て
一つ机の上に置いた、
去り際の花瓶の花を思い出す
凍った花模様の黒い水色の浴衣の上を
金魚がちょろんと波紋を立ててこっちを見ているよ


自由詩 金魚 Copyright 百均 2016-08-26 17:38:49
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