始まりの人
服部 剛

あの頃、彼の人影は発光した
暗闇に跪き、両手を組んで
あの頃、彼は両手を差しのべた
背後の照明に、照らされて
顔の無い客席へ

歌だけを残して
若い彼が世を去った
あの日から――僕は耳を澄ましている
この世界で〈今〉も、脈打つ
巨きな幻の心臓音に

あの頃より少し大人になった、僕は
無数の足が行き交うモノクロームの交差点で
立ち止まり、胸に手を…あてる

時を越えて
自らの内に姿をあらわし
ふたたび発光する

彼の人影  






自由詩 始まりの人 Copyright 服部 剛 2016-08-17 23:33:26
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