透明の街
服部 剛

路面に無数の石は埋もれ
ひとりひとりの石の顔は
瞳を閉じて、哀しみ唄う

この街には色がない
(透きとおったビルの群)
この街には声がない
(透きとおった足音の群)

いつからか
前方に立つ灰色の壁を
あの日の彼の面影が
片手をついて、跳び越えていった…

  *

やがて壁の向こうの雲間から
顔を出す
金色の陽は、街を照らし

久しく忘れていた…鼓動を胸に
ふたたび僕は、歩き始める  





  


自由詩 透明の街 Copyright 服部 剛 2016-07-26 01:55:42
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