終電まぎわの駅員は
松岡宮

終電まぎわの駅員は
ふだん出したことのないような大きな声で
ヨベロ ヨベロ ザコッコ ヨベロ
乗り遅れる人がいませんように叫ぶ
腹腔を管楽器にして叫ぶ

●●ゆき最終列車 発車します・・・! お急ぎください・・・!

夜には魔物が住んでいる
ということを 
新宿あたりでは忘れそうになるけれど

蛍光灯は魔除け
灯りを落とした駅のさみしさ
魔が線路の上を駆け抜けてはしゃぐ深夜のこと
駅員だけが知っている

魔は生きている
魔を呼べ
魔を呼べ
くらがりでお散歩させないといけないね
ああ あれは夜行性の動物だからね
魔は生きている
マヲヨベロ ヨベロ ヨベロ

終電まぎわの駅員は
連絡通路いっぱいに響き渡る声で 叫び続ける
どうか最終電車に乗り遅れないで
残ったら喰われる
お祭りに酔っていないで駅員を信じてください
ザコッコ
通路に倒れる人々が重なる音
知らぬ間にもう喰われている

ヨベロ ヨベロ ザコッコ ヨベロ
終電まぎわにすばやく線路の上を走るものがいる
口をあけている夜の駅の魔に
3人くらいはもう喰われている


自由詩 終電まぎわの駅員は Copyright 松岡宮 2016-07-18 14:27:00
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