円周率
千波 一也



3・14から始まる円周率は
無限に続く

わたしが生まれた瞬間から
円周率を言い始めたとして
数十年を経た今も
それは言い終えられないことになる
そして、わたしがこの一生を閉じるときにも
言い終えられないことになる

(年齢換算は出来ないけれど
それでもわたしより遥か年上に違いないのが
円周率
いや、円周率さまと呼ぶべきか)

数字なんてものは
表せる範囲・空間に
限りがあるものと決め付けていたけれど

円周率を
文房具屋に並ぶすべてのノートを使っても
書き終えることはない
地球上の道路のすべてに書き付けても
太平洋・大西洋・インド洋を凍らせて
その表面に書き付けても
書き終えることはない

(円周率の身長・体重は計り知れないが
少なくとも、わたしなどが
及ぶべくもない
神様あるいは閻魔様さながらの
到底あらがえないのが
円周率であり
ひとつの信仰となりうる
概念であろう)

数字は宇宙だ
円周率は宇宙を超える宇宙だ

ところで
ひとの瞳がまるいのは何故だろう

さくさくパイをかじりつつ
わたしは自在に視界を旅する








自由詩 円周率 Copyright 千波 一也 2016-06-19 23:32:00
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