一日中雨の日にバイクが過ぎる(ゴル投稿長考版)
高橋良幸
寛解、というのだろうか
表面が四方に向かってひかっているさまを見ろよ
アスファルトの単位、瀝青のかどを水滴が打って
二次元の広がりを持つ表面を
雑音には継ぎ目がない
日常に継ぎ目がないほどに
雑音には区切りがない
惰性に区切りがないほどに
出掛ける支度を渋っているうちに
タイミングを逃してしまう、きっと
急ぐなら
うす暗い部屋にあかりをつけて
水たまりが深くなる、
水紋の重なりが千々になるほど
見合わせた顔に潜んだ隠しきれないものを
わずかに緩んでゆく口元を見い出しやすくなる
億劫さの中にある異質なもの
暗がりに並べられたそれらを頼りに
玄関戸でくぐもっていた世界を開ける
大ぶりの傘と
濡れてもいい靴と
あまり濡らしたくないかばんと
打ち付けられる私たち
雨音は硬質なウィンドスクリーンとなり、駆けていく
透明なナックルカバーとなって
継ぎ目なく街の向こうに
駆けていく