零の世界
服部 剛

――あなたは、聴くだろう。
日々の深層の穴へ
ひとすじの釣瓶つるべが…下降する、あの音を。

――漆黒の闇にて
遥かな昔に創造された、あなたという人。
遺伝子に刻まれた、ひとつの約束。

そうして 〇 年前
あなたは、世に産声を上げ
青い空の水面みなもは微かに、揺れた。

あの日、ゼロ歳だった、あなた。
無垢な瞳を、凝らしていた。
(ふいに天井をぎる天使の姿)
渦巻く耳を、澄ましていた。
(窓外の風と花々の奏でる世界の唄)

大人になるにつれて
深まる夜にうずくまる、人よ。
あなたは想い出すだろうか?

世界は交響曲であり
天のメロディを担うあなたが
ひとりの音符であることを。

旅人は、山谷をくぐり抜け
道は霧の彼方へ延びるだろう。

この世の秘密にふれる、その日まで。  






自由詩 零の世界 Copyright 服部 剛 2016-04-18 23:35:24
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