ヤクのような一篇の詩を
天野茂典

  

   『麻薬書簡』は読んだが
   麻薬はやったことがない
   ほんとうにハイになっちまうのだろうか
   ハイになると何が見えるか
   ハイになるとどんな音が聞こえるか
   見えない絵を見たり
   聞こえない音楽がながれたり
   脳内麻薬もあるけれど
   ぼくたちが日常ではしりえない
   どんな世界が開けるのだ
   バッド・トリップというものもある
   麻薬で地獄に落ちるのだ
   いつでもハイになれるわけではない
   日本の詩人では谷川俊太郎さんが
   公式に麻薬体験をしているはずだ
   非合法的にはミュージシャンをはじめ
   かなりの数がやってるのだろう
   ぼくもハイになりたい
   欝は嫌だ
   飛ぶのは怖いが
   定規のような日常に
   めりはりをつけるため
   思い切ってぼくも飛びたい
   非日常へジャンプしたい    
   『麻薬書簡』は焼けてしまった
   ヤク中毒がアメリカの青年たちをたきつけたのだ
   60年代
   日本が安保闘争にあけていたころ
   彼らはヤクと禅 詩に未来を託したのだった
   午後5時55分の鐘がなる
   ハイになりたい
   ハイになってバーチャル・スピリットと出会いたい
   すべてが言葉のために
   すべてが詩のために
   声をあげて叫びたい
   ヤクのような一篇の詩を と



          2005・02・23 



未詩・独白 ヤクのような一篇の詩を Copyright 天野茂典 2005-02-23 17:57:32
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