ちいさな 三つの声
るるりら


【こめる】

ちいさな人が ちいさな声でいった
「あさがおは かさ みたい」
くるくるたたんでいる花は かさみたい
雨の日にひらくと かさみたい

ちいさな傘から
ぬーと わたしのほうに出てきた手のひら
あの おさない手は 傘みたい



【ぺこり】

いつからか心の中で 
しかられたときは ぺこりと 言ってきた
おじぎをしながら 二度としませんといいながら

わたしが れんげの花を好きなのは
父さんの つくりかけのブロックの穴に
わたしが根の付いた レンゲのつぼみを 植えても
すこしも しからないで
花が咲くまで 待ってくれたから

ふかぶかと 父さんに おじぎすると
とうさんが「ぺこり」と言って がはがは笑った

今年も田んぼの すみっこで さいている花は
いまでも あまい蜜の匂いがして 
おなかのそこまで その香りを吸い込むと
おながが ぺこり

おもわず あのときの父さんみたいに
わたしは笑う 

【ともる】

さあ みなもとを て ら せ
うたが そこにあるだろう
まぶたを とじて  
はくいきは よせるなみ 
すういきは かえすなみ
みな底を照らせ

ゆめのおくの いちばん
尊い場所の こころの
みな底にあるのは ちいさな唄
わたしを照らす ちいさな声

 


自由詩 ちいさな 三つの声 Copyright るるりら 2016-04-04 16:02:25
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
お題バトル/勉強会等 課題投稿作品集