名も無き人へ
服部 剛

旅先のホテルの部屋にて
机の上に置かれた一枚の紙

「この部屋は私が清掃しました  
 ゆっくりお過ごし下さい
            〇〇」

名前のみが直筆の
見知らぬひとの心遣いが
残った部屋のベッドに
独り、腰を下ろす

心を込めてシーツを替えてくれたのか
お義理でバスルームを洗ってくれたか
幸福なひとなのか
孤独なひとか

この部屋の
見えない気配に
支えられた空間で

ぽつんと独り
〇〇さんに、礼を言う  






自由詩 名も無き人へ Copyright 服部 剛 2016-03-28 21:22:13縦
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