キャッチボール
服部 剛

一日の仕事を終えて
帰った家のソファに、坐る。
ママは台所に立っている。

人より染色体の一本多い、周は
パパが足を広げた間に
ちっちゃい胡坐あぐらをかいて
「おかあさんといっしょ」の
ビデオを見ている。

パントマイムのお姉さんが
テレビの中から
目には見えないボールを、投げた。

ボールは、周を通り過ぎて
背後のパパが、受け取った。

今日一日、パパは
目には見えないボールを
ちゃんと投げれたろうか?
しっかり受け取れたろうか?

仲間と歩む、日々の職場で
ひとつ屋根の下の、この家で

ママがまな板を叩くを聞きながら
幼い周の頭を撫でながら
――パパはひと時、考える。

この手にのせた、見えないボール。
テレビの中のお姉さんを真似て
明日こそ、誰かに投げてみよう。  






自由詩 キャッチボール Copyright 服部 剛 2016-03-23 18:30:18縦
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