しびれるる
あおば

          160307

本堂の前には
村人全員ラインの
呼び出しで集合
全員参加がこの村のモットーだ
講師の先生が作務衣を着て
お釈迦様におしりを向けて
村人に檄を飛ばす
民主主義の原点に返るのだと
何処かの過激派のようなことを言う
お釈迦様のおっしゃたことは
何処までが本当でどこからが弟子たちの創作かは
分からないから
当時の教義に帰るのだという
男女同権の憲法に抵触すると
ひとりが異議を唱えると
年配の女性達は、声を荒げて
講師に食ってかかり
この女達の男女同権も
未だに道半ばなのを知らないか
さんざん古くさい民法のために不遇の道を歩まされた
もう男達には騙されない
クリントン氏を我が国の総理大臣にしたい
国も企業も似たようなものだ
アンゲラ・メルケル氏の方が
もっと適任だの声が上がり
メルケル氏を招致できないものかと
皆は無い知恵を振り絞る
企業も社長を外国人に託す時代だから
国だって同じことだ
同じ敗戦国のよしみで
我が国も面倒見てくれないかなと
会議に参加したもの達は考えた
このアイデアは直ぐさま、全国に伝わり
今頃は、語学堪能なものの手で招致のエアメールが
投函されたと思う
郵便事故さえ無ければ
必ず届く
村の者たちはそう確信して
今朝もお寺の本堂の掃除をする
住職が居なくなったので
放置しておくと
荒れ寺になってしまう
お釈迦様の前だと
不思議に皆、本音を話すのだと
講師の先生は思いながら
村を後にする
ボランティア講演だから
講演料は無く、交通費もゼロ
支給の昼飯だけを庫裏に隅で寂しく
味わってからのことだ
堅い板の間の本堂で畏まっていて
足がしびれて立ち上がれなくなったのは
彼だけで
村人全員、ヨガ道場としてもお寺を活用しているので
しびれたものは一人も居ないということだ
健康寿命の高い村の住民は
意気軒昂
今日も会議を続けては午後には実行に走り回る
クリントン氏もメルケル氏も気に入ってくれるのではないかと
僕は思った
遷都するならこの村が良いなと思うけど
せんとくんが嫌な顔をするかも知れない
なにしろ鹿は名物のシビエ料理に使うので
近頃はめっきり数を減らしていると
ハンターの友は少しだけ不満を漏らす
しかし、反対はしないというのでご安心を



初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、流川透明さん




自由詩 しびれるる Copyright あおば 2016-03-07 01:05:29縦
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