老師の祈り   
服部 剛

焙じ茶を飲む、向かいの空席
ふいに 誰か の気配があり…

在りし日の老師は
日々 南無アッバ を唱和した

目には見えない 誰か とは
――もしかしたら、お釈迦様?
――もしかしたら、イエスさま?
――あるいはもしや、親しき死者?

老師が天に昇った、あの日から
南無アッバ を唱えれば
風は吹き
涙の夜の傍らに、つき添う 誰か
ここぞの機会の到来に、背を押す 誰か

姿も無いのに
何故かふつふつ…想いのほとばしる
(アッバの世界)の領域に
僕は自らの存在をまるごと――投じます

この人生という、仮の宿にて
天の想いをそっと開く
一輪の、すみれの花になるように  






自由詩 老師の祈り    Copyright 服部 剛 2016-02-15 23:56:41
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