死者の息
服部 剛

死者と語らうには、飲むことだ。
向かいの空席に
もう一つのお猪口ちょこを、置いて。

自分の頬が赤らむ頃に
あたかも体の透けた人がいるかのように
腹を割り、肝胆を晒すのだ。

語らう内に…この世の自分という役が
物語に置かれた
ひとりの駒に―視えてくる。

明日のシナリオなんぞは
思い煩うことなかれ

日々の暮らしの一コマを
余白にして
(忘れた頃にやってくる)
死者の息吹が、吹くように  






自由詩 死者の息 Copyright 服部 剛 2016-02-05 20:27:58
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