宇宙の缶詰
あおば

           160126

キタキツネの缶詰ならいくらでもあるよ!
私は声を張り上げる
新鮮でぴちぴちした若い雌の肉だよ
いつか来た道を馬車で運ぶ
淑やかな女性の胸にも
キタキツネの空き缶から作られた
星形ブローチが胸元に着いている
軽やかな蹄の音に君は宇宙を感じ
馬の手綱を緩めて大空を眺める
見えない星がきらりと光り
キタキツネの缶詰にも降り注ぎ
彼女のブローチは妖しく輝き
御者の君を誘惑している
知らん顔して馬は走る
君は何かを感じて空を仰ぐ
空は快晴、何の心配も無いようだ
2頭立ての馬車は走るのを止めない
君は誘惑にどうしても我慢できない
キタキツネも我慢できない
宇宙には君の理解できない法則で満ちている
満足している君は馬になった方が仕合わせだと
軽やかな蹄の音と薫風が唆す
君は決意して馬になる
その瞬間、君は肉とされ、偽キタキツネの缶詰となり
表装も偽装されて宇宙船へとコウノトリ千万号に積み込まれる
沖縄にも雪が降ったとのニュースの陰には
偽装された宇宙がにっこりと微笑んで
新たな君がやってくるのを待っている
ハッピーバースディ ツーユーと唄う


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、沢田マヨネさん







自由詩 宇宙の缶詰 Copyright あおば 2016-01-26 02:11:25
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