麺麭の顔
服部 剛
自分の中に、経験が
溜
(
たま
)
ってくると
いよいよあなたと私に、別々の顔が現れる。
背が高いとか、低いとか
体が太いとか、細いとか
頭が良いとか、悪いとか
線を引くという行為の、ナンセンス。
(存在の比較を――消去せよ。
背後から日射す、ゆりいか!)
燃え盛る、
竃
(
かまど
)
の扉を開き
鉄板を引き出せば
大きさ・形・焼き具合の
唯一無二な
麺麭
(
パン
)
達が
和やかな顔をほっくり並べ
しゅるしゅる…湯気を昇らせる。
自由詩
麺麭の顔
Copyright
服部 剛
2016-01-15 23:50:02縦