1月XX日のアッくん
北大路京介

1月XX日のアッくん

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


スーパーに買い物に行ったアッくん。
凹んだ缶ジュースや賞味期限切れ間近の商品に2割引きや半額のシールが貼ってある。
切れそうになってた胡麻ドレッシングが半額。ジュースやお菓子もシールの貼ってあるものをポンポン買い物かごに入れていく。

レジに並ぶ時、見かけない顔がある。新人のレジキャッシャー。
大学生くらいだろうか。アッくんドストライクの美人。
もちろんアッくんが並ぶのはその子のいるレジ。

名前を知りたいけれど、名札があるはずの位置には『研修中』の文字のみ。
無事研修を終えて長く働いて欲しいもの。

ピッピッピッピと商品がレジを通っていく。
「1884円になります。」
初めて声を聞いた。声も可愛い。しかし、1800円以上もするだろうか。
かごの中を見て、ヒイフウミイヨーイツムーや~とー・・・
割引品が多いからそんなに高くなることはない。
いつもなら千円札2枚田してさっと帰るアッくん。
ここは新人ちゃんと会話して接点が生まれるチャンスと勇気を出して聞いてみた。
「ドレッシング、半額になってますか?」

「えっ あっ 失礼しました。」
新人ちゃんはレジのボタンをピコピコ押すが、どうやらデータ変更ができない様子。

割引シールの品いっぱい買っちゃって申し訳なくなってきたアっくん。
「いいよ、いいよ、そのままで。ごめんね。」と去ろうとするが、「お釣りが、お釣りが」と新人ちゃん。

新人ちゃんは先輩男性店員を呼んできた。男性は手早く処理をする。
まぁ、仕事できる男ってカッコいい。そんな目で見つめている新人ちゃん。
いっぽうこちらは面倒な客だと思われてるんじゃないだろうか。
嫉妬し落ち込んでいくアッくん。

帰り道、死にたいなーっと思うアっくん。
しかし、胡麻ドレッシングを使い切らないと勿体無いと思い、
もう少し生きようと思うアッくんであった。


散文(批評随筆小説等) 1月XX日のアッくん Copyright 北大路京介 2016-01-09 21:19:25
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