さようなら、晴れる人
霜天

さようなら、晴れる人

暮れ際の暖かさ、名残、手のひらの名前を
呼んでいる、聞いている、思い出している
花びらの震える下で潜り抜けた門を
指先で触れるくらいの気配で通り過ぎる
一度過ぎた言葉は、笑顔の人、道のさなかの
誰も彼も通りすがりだから、それはいつまでも優しくて


さようなら、晴れる人

誰もが帰っていく場所を頭の隅に持っていて
触れそうで、触れること、自分を知っている場所を
扉を開ければ、雨に沈んだ自転車と、動けない自分
止まれない涙は静かに、回転する意識の内側へ
過ぎていくことばかりが、こころに少し沈みすぎて
手を伸ばす色褪せたもの、帰るほどに優しくて
寄り添うことも出来なくて




さようなら
さようなら
きっともう、届かないくらいの暖かさ

雨のあと、虹になる
僕らの漏らした溜め息の音
触れるように吸い取って
あとはもう、遠ざかるだけ

またいつか、その時は、暖かい雨の日に

さようなら
さようなら


自由詩 さようなら、晴れる人 Copyright 霜天 2005-02-20 02:31:13
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