愛し仔を送った、君へ
服部 剛

君の相棒が16年着た
体を脱いで、天に昇った。

あまりにも静かに消える
湯気の後に――消えぬもの。

透き通ったビー玉の瞳
あの日のままの鳴き声

呼んでいる
いくども、いくども
「猫語」の辞書はなかれども

< アリガトウ、哀シマナイデ
 アナタト過ゴセテ
 本当ニ、僕ハ幸セダッタ・・・>

白混じりの灰色の
少々ふっくりとした、毛並の
後ろ姿は
夜の帳の向こうへ、消える。

暗闇のスクリーンに、現れる
無数のシャボン玉の中に
淡く甦る
宝の場面達を・・・胸に抱き
静かに君は、立ち上がる。

明日の日向の方角に
二つのつま先を、揃えて。  






自由詩 愛し仔を送った、君へ Copyright 服部 剛 2015-12-27 23:59:36
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