夜間飛行
ともちゃん9さい

隣のゆるいおばさんが貸してくれたレディコミに男と女がえがかれて
9歳で知った
それは海に骨をまく話
ぼくが死んだら海に骨をまいてくれという話
言いながら
抱き合う話

あの歌手が歌った歌を聴いて骨の音を知った
録音とミックスを上手にすると
ヘッドフォンでこんなにも近い音が
あなたのすべてを知ってしまった
においだけ知らない
そんな気持ち

死んだ人の話
生きている人の話
変わらなくて
死んだ人の声
生きている人の声
ヘッドフォンでこんなにも
近づいて
さわる以外のことは全部した
みたいだこの4分3秒の間に
たいていのことが片づく
あなたはやさしくしまって
掃除機をかけるために
わらって
やさしくしまってしまう

ねむるまえの夜間飛行の
手を離す前
はじめてママがいなかった
泣かないで
暗くなっても電気をつけずに
玄関のドアの開く前の足音と心臓の音が
枕から聞こえる
犬のようだ

生まれる前
抱き合っていた
男と女から生まれた
誰かのために生きれない
わたしとあなたが抱き合って
期限が近づく
ああ
水の中の肌のよう

タクシーで
あなたが待つ場所に向かった
それはあのドラマを記憶しただけ
ママと夜と向かった、流れて
ずっと続けばいいのにって
うずめて奥のくらやみと音を聴いた
目が覚めてママがいなかった
泣かないでねむるまぶたで感じる

子どもがきらいだったのにちゃんと子どもだった
とくいげに
わかっているつもりでぜんぜんわかってなくて
子どもだった
恥じるけどちゃんと大人になった
ママよりも年を取って

中抜けしただけ
流れて
なにもかもずっと続いてる

子の手を取る


自由詩 夜間飛行 Copyright ともちゃん9さい 2015-12-07 11:50:25
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