日溜りの墓   
服部 剛

府中の霊園の芝生に、僕は坐る
目の前の ✝遠藤家 の墓前に
炎と燃えるポインセチアの植木鉢と
グラスに日の射すワインを、置いて

初めて訪れた十五年前の夕暮れ
左右に生けた紅白の薔薇は
さやかな風にゆれ…

五年前の夏は、妻と銀の指輪を交し
四年前の秋は、生後間もない
ダウン症児の周ちゃんと
パパとママは初めての遠出をして
遠藤先生に会いにきた  

四ツ谷の教会へお墓が引越しをする
前日――こうして少々頬を赤らめ
遠い校舎の窓から琴の奏でる「桜」を聴きつつ

目の前に透けておられる
遠藤先生の面影と、僕は  
一つの約束を交す

――ふたたびあの日の風は吹き…
  墓前の花や草々は、身をゆらす
  正午の過ぎた、芝の日溜り  






自由詩 日溜りの墓    Copyright 服部 剛 2015-11-24 19:57:22
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