西の野球を観に行くところ
松岡宮

西武線の運転士が打席に入る
手先が器用で ちから無し
誰にも期待されていない8番セカンド運転士
傾きかけた西日を頬に受けながら
少しバットを寝かせて打席に入る
甘い高めのボールが運転士のまつ毛を撫でたら
ぽこん。

・・・おや、打ちました、センターフライか、いや、いや、意外に伸びる、入った、入った、ホームラン、まさかの、ここで、勝負を決めるホームラン、運転士、打ちました・・・

(フフッ)
運転士の耳には文化放送アナウンサーの絶叫が聞こえている
(フフッ)
いつもクールな運転士が
唇の端だけで微笑む
いつの間にか陽ざしがいっそう傾いて埼玉のほうに落ちてゆく
そうさ あそこさ あそこに夢があるのさ
楽しい夜へと出発進行!
黄色い電車に乗った少年少女たちはみな
西の野球を
観に行くところ


自由詩 西の野球を観に行くところ Copyright 松岡宮 2015-10-01 23:18:24
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