◎影合わせ
由木名緒美
あなたの腕と私の脚が
幾何学的に重なって
ミルフィーユ様態の発熱体となる
右腕の先から頭を伸ばせば
男の背中ごし 悠々と輝る月が見えた
まるでこの土から派生して生い茂った多肉植物のよう
互いの口から甘い水を吸い合って
赤く染めるのだ
月も引き寄せられるくらい情熱的な花弁を
お互いの四肢さえ己のもの
右脚はあなたの肩から立ち上がり
薬指は耳の装飾物に成り下がる
愛せば愛すほど
絡み合ったひとつの命の供託者となるこの身であれば
もう水脈を探すことも
獲物に罠を掛けるのもよそう
ここで骨と幹だけになって遺跡となるのだ
満月の夜 卵を抱えた胚の自覚夢に
触手を伸ばされながら共振していく
幾何学の影に寄り添って
毎夜夢見る過去生と共に
未来の何処であなたと再び巡り合えるか
今となってはもう
知ってしまったのだから