聡明であるべきふたり
AquArium

目が覚めた時に触れた
手の先がジンと痺れていた理由は
握った力が強すぎていたからなのか
心地よい鈍痛に包まれて
寝息を聞いている朝

無言のまま身体ごと引き寄せては
暑さのせいなのか
朝がきたという事実のせいなのか
わたしはまた、
苦しくなって寝返りを打つ

分厚い身体の重みと
憶えてしまった匂いに
やけに安心して、
ゆっくりと額をつけては、
朝を盛大に無視してみる

微睡みの中つぶやいていた
なんの夢を見ていたの?と
たずねても、
…分からない…と
微笑みながら瞼を閉じる

そんな無防備な顔が
憎たらしくて可愛いから
不覚にも切り取ってしまった1枚を
見せるか見せまいか
悩んで保存するにとどめた

しがみつくことをしないために
上辺の言葉たちを捨てた
聡明なふたりであるはずなのに
言葉は要らないということを
証明する視線や仕草の
ひとつひとつが
手に入らないものへの
執着を生んでしまいそうで


夢中で
求めることしか、
できずにいるね

そのときは
なにもかも
忘れたフリが、できるね

離れたくは、ないな。


自由詩 聡明であるべきふたり Copyright AquArium 2015-06-03 01:44:42
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