無題
梓ゆい

薄く紅を差した土気色の唇。

「顔が綺麗になったね。」とつぶやく母が

少しだけ微笑んだ。

「また、何処かで会おうね。」と棺を覗く妹は

涙をぬぐう事も無く

もうすぐ灰になる父に話し掛ける。

(外は白く覆われたヴェールのよう。)

花嫁衣裳の変わりに

三人姉妹は今日

おろしたての喪服を着た。


自由詩 無題 Copyright 梓ゆい 2015-05-19 21:55:23
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