名残り・・・について
服部 剛

久々に一人で実家に帰る、晩
何処か名残り惜しく
幼い息子の肩を抱きつつ
嫁さんに少々草臥れた足裏を揉んでもらう。

  *

久々におふくろの味で腹を満たした、朝
何処か名残り惜しく
注いでもらった湯呑の茶を、味わい
「今度は皆でうまい蕎麦でも食おう」と
見送る母ちゃんに言い残し
フーテン気取りで、実家の玄関を開く。

(きっと――全ての人の出逢いと別れは
 互いの実家を行き来した
 昨日と今日の密かな郷愁に似て…)

  *

平日の人気ひとけ無い喫茶店で、一人
嫁さん・息子・両親の顔を
想い浮かべ
ずずず…と珈琲を啜り
愛読書の頁を、開く。

  *

本の中は、とある料亭の戸を
がららと開いた、夜の小路こみち

風にゆらめく暖簾のれんを背に
初老の作家と、同級生等は
それぞれに白い吐息を昇らせて
しみじみ…それぞれの家路に着く
滲んだ背中が三つ
夜のとばりの向こうへ、消えた。  







自由詩 名残り・・・について Copyright 服部 剛 2015-04-20 23:59:12縦
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