雑談
今野紀文



「ねえ、あれ佐々木希?」
「うそ、そんなわけないしょ。」
「でも凄い似てない?」
「えー、似てないよ。橋本愛って感じ。」
「うん、誰?」
「寄生獣のヒロイン。」
「観てないわ。」
「じゃあ、あまちゃんの友だちの子。」
「あー!」
「わかった?」
「あんにんに似てる子だ。」
「誰?」
「入山杏奈ちゃん。」
「…誰?」
「AKB!」
「ああ、興味ないもん。」
「えー、橋本愛ちゃん好きなんだよね?」
「んー、まあまあ。」
「好きって言ってよ。」
「じゃあ好き。」
「じゃあ入山杏奈ちゃんも推そう!」
「やだよ。」
「…ほら、見て、これあんにん。」
「あー、かわいい。」
「だよね!」
「でも推さないよ。」
「なんでよ!」
「ベイビーレイズが好きだもん。」
「ちぇー、そっちかよ。あ、あれ佐々木希の彼氏?」
「橋本愛だよ。」
「橋本愛の彼氏?」
「ブスじゃん。」
「もったいないね。」
「どうやって落としたの、リアル電車男?」
「弟かもよ。」
「は、似てなさすぎ。」
「橋本愛が整形してるんだよ。」
「じゃあさ、弟が何回整形したら橋本愛になれる?」
「……百回くらい?」
「たぶん彼氏だよ。」
「パーソナルスペース埋まってるもんね。」
「この前の講義で習ったやつじゃん、それ。」
「早速使った!」
「いいなあ、ブスもデブも結婚できるのにうちらはできないんだね。」
「また始まったよ。でも渋谷区でパートナーシップ法が認められたんだよ。」
「知ってる。ここ北海道だよ。」
「よく北海道は東京より十年遅れてるって言うよね。」
「十年経ったら三十一歳だね。」
「適齢期じゃん。」
「新宿より渋谷が早いって意外だよね。」
「確かに。」
「十年後にはお互い、相手がいるといいね。」
「あたしは上京するけどね。」
「くそやろう。」
「一緒に行こうよ。」
「行かないよ。」
「なんで?」
「ゴキブリと再会したくないから。」
「ゴキブリと結婚どっちが重要なの!」
「ゴキブリかなあ。」
「ひどい。」
「三十一歳はまだ勉強してると思う。」
「早くしないと子供産めなくなっちゃうよ。」
「そういえば子供どうするの?」
「精子バンク?」
「誰の精子?」
「知らない人…。」
「嫌だよ。ジョディ・フォスターは友だちに提供して貰ったんだよ。」
「じゃあうちらもそうしよう。」
「無理! 男友達いないもん。作れないもん。」
「男嫌いだもんね。」
「努力はしてるよ。カウンセリングも行ってる。」
「うそ、初耳なんだけど。」
「十年後には男友達できてると思う? 精子くれって言えるくらい仲良くなってると思う?」
「わかんない…。彼女に産んで貰えば?」
「自分で産みたいもん。」
「じゃあ彼女の男友達に提供して貰いなよ。」
「そのときの彼女に男友達がいるかわかんないよ。」
「それを言ったら世の中わかんないことだらけだよ。」
「だから悩んでるんでしょや。」
「努力は必ず報われるってたかみなが言ってたから大丈夫!」
「報われたと思えなきゃ意味ないけどね。」
「ネガティブだな。」
「お腹減ってるせいだわ。あと何分待ち?」
「三十分だってさ。」
「札幌のくせに調子乗ってるわ。」
「十年も遅れてるのにね。」
「飴ちゃん食べる?」
「いい。パンケーキの甘さに感動したいから。」
「え、なんか哲学っぽい。」



自由詩 雑談 Copyright 今野紀文 2015-04-03 11:10:22
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