ショパンの声
服部 剛

――どうすれば、私は私になれるのか?

日々の舞台を演じる自らの
配役について、想い巡らせていた。
老舗の名曲喫茶にて
ショパンの夜想曲を聴きながら。

ぷつぷつ…と、ノイズ混じりのレコードの
遠くに回転する(過去)の中で
今もピアノを弾いている、ショパンは
薄暗がりの店内で、時のまにまに囁いた。

――私のピアノになりなさい…
――私があなたを奏でよう…

夜想曲の最後の一音が、店内に響く。
曇り硝子から射す日が、頬を照らす。  
私の思念は一度、空になる。

――ショパンのピアノに、なってみよう  







自由詩 ショパンの声 Copyright 服部 剛 2015-02-07 18:45:50
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