口をぽかんと開けて
クローバー




道路わきで見かけるほとんどの獣は
車に引かれてしまった獣
口をぽかんと開けて
横たわっている
腹が裂けたり
頭が割れたりしているものもあるが
たいていの獣は毛むくじゃらで
血が大きく飛んでいることは少ない
そんなところで寝ていると風邪ひくよ
と声をかける子供がいてもおかしくないような
そのまま剥製にしても事故で死んだとは思えないような
きれいな体をして横たわっている
命が抜けて落ちているのに気配だけが強くあり
その不安定さに怖いという言葉が浮かぶ
事故にあう瞬間の獣の頭に浮かんだ恐怖が
その場所に染み込み
空気を伝線しているのだろう
獣は
ただただ、ひたすら体を横たえている
口をぽかんと開けて
そこがまるで、たましいの通り道であるかのように。


自由詩 口をぽかんと開けて Copyright クローバー 2015-01-16 23:51:18
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