マリアのまなざし
服部 剛

深夜――薄闇の部屋に
CDデッキの青い灯かりを、点けて
遠藤周作の母・郁が
遠い過去から唄う讃美歌を流した。

人より染色体が一本多い
三才の周は、高熱で寝こんでいるのに
一瞬――鈴の笑いを奏でた。

昔…「周ちゃん」と母に愛しく呼ばれた遠藤先生
今…「周ちゃん」と妻に優しく抱かれる我が息子
九十年の時を経て
物語の続きを夢見て眠る、周よ

薄闇の青い灯かりにぼんやり浮かぶ
机上のマリア像は
両手を広げ
君の明日をじっと――見守る。  







自由詩 マリアのまなざし Copyright 服部 剛 2015-01-14 22:53:25縦
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