新年の詩—鎌倉霊園にて—
服部 剛
左の墓石の下に、堀口大學の骨は永遠に眠り
右の墓石の下に、川端康成の骨は永遠に眠り
西方の山間に、今にも
杏
(
あんず
)
の夕陽は沈み
新年の富士は琥珀に染まる姿を浮かべ
東方の空に、満ちようとする月は昇り
私は今、鎌倉霊園の丘の上にて
在りし日の詩人の声を、呟いた。
――夕暮れの時はよい時
妻にかけた携帯電話越しに
あーうーと
染色体の一本多い三才の息子が発する
言語未満の声
携帯電話をポケットにしまい
墓石の前に立ち
稲穂の姿で、合掌する。
――日の本よ…
詩心
(
ししん
)
を豊かに育むような
杏の夕陽の国であれ
自由詩
新年の詩—鎌倉霊園にて—
Copyright
服部 剛
2015-01-04 23:58:05縦