見えない世界に詩があるのだという常識
天野茂典

   ひゅんひゅんと北風はめぐり
   ぼくはタバコの火をつけられないでいる
   詩を求めて詩から放り出され
   いくらタバコを吸っても安息は得られない
   一月は何とか切り抜けた
   あしたから二月だ
   『われらが不満の冬』といったのは
   スタインベックだが 不満は
   ちいさなポケットを溢れようとしている
   バスの時刻表も明日で変わる
   学生がいなくなるからだ
   若い命はいい
   こころがはなやぐ
   未来があるからだろう
   学生たちの賑わいをかいたこの町は
   四月までは廃墟になるのだろう
   われらが不満の冬よ
   どんな希望を持って
   二月の鉄橋を渡ればいいのだ
   白 白 白 白 白 白
   ペンキを塗りたくったような
   トンネルの先の冬木立
   鳥たちの沈黙
   街では冬物バーゲンも終わるだろう
   われらが不満の冬
   見えない世界に詩はあるのだという常識
   見えない世界に冬があるのだという常識
   ぼくはしばらく白い丘の冬木立でいよう
   風邪を引かないように
   マフラーをして


                 2005・01・31
    


未詩・独白 見えない世界に詩があるのだという常識 Copyright 天野茂典 2005-01-31 17:54:32
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