喪失
藤鈴呼



君の居なくなった虚空を
ふんわりとした雲が 流れてた
何故だか 涙は 出なかった
何故だかは ハッキリしている
「喪失」でも「消失」じゃあ
ないからだ

それでも 繋がっていた 蜘蛛の糸を辿れば
空へ届くのだと 信じて居た頃よりは 苦しくて

泡を食む 金魚のように
誰かの後を ついていきたいのだと
まとわりつく 蜘蛛の糸のように
本当は どんな形にも 七変化する 
雲の形を眺めて 笑いたかったのに

歪んだ隙間から見える 眩しげな瞳に
僕の姿だけが 映らなかったから
それが 哀しくて

穴が開く程 見つめてた
穴なんて 開くもんかって
飽きる程 見つめてた
見つけて欲しくて 君に
明ける空を 見定めたくて

今感ずる 一つの喪失につられて
次々と 悲しみが 連ならぬようにと 祈る
幾ら 祈り続けても
本来 無駄なのだとは 知っているけれど
知らずに 生たいから

可愛らしい君の 面影ばかりが
ちょこちょこと 脳裏を 埋め尽くす

かわいいね けれど ちょっと かなしいね
平仮名で 表現したら
ほんの少し 薄れる気がした 悲しみも
握り潰して 粒にして
歩き出さねば なるまい

今日は 白き粒も 見えない
雨水 だからかな
薄っぺらい 思いばかりを 浮かべた水溜りが
ゆっくりと 広がって行く

のっぺりと 続いて行く
空に 巻かれて
昨日の 蒼い空間を染めた 飛行機雲が
すうっ と 哀しい気分を 切り裂いた 気がした


自由詩 喪失 Copyright 藤鈴呼 2014-10-11 07:00:38
notebook Home 戻る  過去 未来